形成外科
形成外科
形成外科は体表面のあらゆる変形や機能障害に対して治療を行います。先天的なものから、ケガや皮膚腫瘍といった後天的なものまで、様々な要因にて、主に手術などの治療を行うことにより、できるだけ正常な状態へ近づけることを目的としています。
日常生活で多い外傷は熱傷です。やけどは、皮膚に高温の液体や固体が一定時間以上接することで生じるもので、火炎や爆発などでも生じる場合もあります。また、比較的低い温度(44~60度)で生じる低温熱傷もあります。この他、薬品(酸、アルカリ溶液など)による化学熱傷や電流(家庭電源、落雷など)による電撃傷などもあります。
幼児の熱傷では炊飯器やポットの水蒸気の噴出口や、ヒーターの吹き出し口に触れてしまうケースが増えています。やけどをしたら、流水で15~30分程度しっかり冷却することが大切です。水ぶくれがある場合は出来るだけ破らないようにしましょう。
やけど・擦り傷・切り傷などの外傷、手術後やにきびなどで傷あとが残ることがあります。深い傷であるほど目立つ傷あとになりますが、浅い傷でも広範囲に及べば整容的に問題となることがあります。
傷あとにはいくつかの種類があります。痛みがある傷が通常の経過で治り、その残った傷あとを「成熟瘢痕」といいます。「肥厚性瘢痕」は深い傷のあとで、傷ができてしばらくはミミズばれのように盛り上がります。お腹など手術後の傷あとなどが肥厚性瘢痕になりやすいといわれています。この他に、皮膚の深いところにある真皮で炎症が続いて生じてしまうケロイドがあります。
治療には瘢痕を切除して縫合する外科的治療や、皮膚の再生を促すレーザー治療、傷あとに特殊なメイクアップを施すメイクアップセラピーなどがあります。
ほくろは良性腫瘍の一種で、表皮にメラニン色素を生成するメラノサイトが集まり、黒色斑になります。隆起したもの、平らなもの、毛が生えているものなど様々です。生まれつき皮膚の広範に色素性母斑がみとめられるものは、巨大色素性母斑と呼ばれます。
いぼは種類も多く、治療もそれぞれ違ってきますが、顔や首などにできやすい老人性のいぼ(老人性ゆうぜい)や、手足にできやすいウイルス性のいぼ(尋常性ゆうぜい)などが代表的です。
治療は液体窒素による治療や電気やレーザーで全体を焼き取る方法や、メスなどを使用して切り取る方法が一般的です。
袋状の組織が皮膚に下にでき、その中に垢や脂がたまってできた固まりが粉瘤です。体中のどこにでもできる良性の皮下腫瘍です。皮膚の表面の多くは数ミリ程度の盛り上がった状態から次第に大きくなり、数センチほどの半球状になることもあります。皮膚が破けると膿汁と臭い粥状の固まりを排出します。膿を出そうと無理に圧迫すると、袋が破れて脂肪織内に散らばり慢性化してしまうこともありますので、内容物を無理に排出することは避けて早めに受診をしてください。
眼瞼下垂とは、まぶたが下がって物が見えにくくなる状態をいいます。物を見るために顎を挙げて物を見る癖がついたり、眉毛を大きく持ち上げ額にいつも力が入っていることで筋肉が緊張し、頭痛や首や肩のこり、慢性疲労といった不定愁訴が多く現れます。
昼間やけに太陽がまぶしかったり、夕方になると車のライトがまぶしかったり、眼の疲労感や頭痛がしてつらいという相談が多く寄せられています。視野障害という機能面の問題だけではなく、外見的にも「目つきが悪い」、「眠そう」といった印象を与えることが多く、おでこにしわができやすくなるため整容面の問題が生じてくるのも特徴です。
加齢による筋力の低下や、皮膚の弛緩のほか、まぶた内の軟骨と、まぶたを持ち上げる筋肉の連結部が緩んでしまうことなどが原因で起こります。多くの場合加齢とともに徐々に下垂してきますが(加齢性眼瞼下垂)、開眼器を使った眼の手術を受けたあとや、若年層でもハードコンタクトレンズを長期装用している方にも生じてくることがあります。「眼をあけているのが疲れる、眼が細くなったようだ」という症状だけでなく「頭痛がする、首や肩がこる、慢性的に疲れている」「不眠症」などの不定愁訴を生じることがあります。後天性の眼瞼下垂は一般に両側で起こることが多いです。
生まれたときからまぶたを上げる筋肉(上眼瞼挙筋)の発達障害があり、目を大きく開けることが困難な状態になります。一般的に片側で起こる場合が多いのが特徴です。(約80%)
力を抜いて正面を向いたときにまぶたが瞳孔(黒目の中心)の上まであがらない状態を認めた場合に先天性眼瞼下垂と診断します。常にまぶたが瞳孔にかぶさっていれば視力障害が起きることがあるので、早めの受診をお勧めします。
皮下に発生する腫瘍の中では多くみられる良性の腫瘍です。皮下組織にみられる浅在性脂肪腫と、筋膜下、筋肉内、筋肉間にみられる深在性脂肪腫があります。40~50歳代に多くみられます。背部、肩、頸部(くび)などに現れることが多く、上腕、でん部、大腿など四肢にもみられることがあります。痛みなどの症状は無く、皮膚がドーム状に盛り上がり、柔らかいしこりとして認められます。大きさは数ミリ程度の小さなものから直径が10センチ以上に及ぶものまで様々です。治療は手術による脂肪腫の摘出で、再発することはまれです。
巻き爪は、爪が横方向に曲がり爪の下の皮膚をつかむように巻いている状態をいいます。陥入爪は爪の両端から爪が皮膚に食い込むことで炎症や腫れ、疼痛が生じます。傷が化膿してしまうこともあります。巻き爪と陥入爪が合併して起こることも少なくありません。
予防には正しく爪を切ることが有効です。食い込んでいる爪を斜めにカットすると、爪が伸びるときに再び食い込むため、爪の角を残してカットすることをお勧めします。また、靴の選択や足の衛生管理などフットケアも大切です。早期治療を望まれる場合や、爪矯正などの保存的治療が無効な場合には手術をお勧めします。